よりよい介護サービスのために
認知症ケア
ご自分やご家族にこの先認知症の症状が出るのではないか、と考えると誰しも不安な気持ちになるのではないかと思います。 そうした不安にこたえるべく、私たちサンスクアエア沼南グループは、認知症の問題に取り組んできました。
認知症ケアとは
何でしょうか?
認知症ケアとは、認知症と分かった時点で始まる病気に対する接し方であり、認知症という病気になっても、普通の生活を送れるようにするために、少しだけ手助けや心遣いをすることだと私たちは考えています。
認知症の症状には、認知機能の低下や記憶の障害といった中核症状と、中核症状にさまざまな要因(環境や性格など)が加わることで出現するBPSD(周辺症状)とがあります。暴言や暴力、昼夜逆転、幻覚、徘徊といった介護において困難となる症状はBPSDです。BPSDは心が穏やかでないために起こり、適切なケアによって改善できることがわかっています。私たちは、目の前の利用者の皆さんのBPSDを改善するために、どうしたらその方に心穏やかになって頂けるか、を考えています。
健常な方であれば、自分で興味ある所へ出かけたり、同じ趣味のサークルに入ったりできますが、認知症の症状のある方へは手助けが必要です。その方がどんなことに興味があるのか、どんなことをすれば心穏やかに豊かな人生を送れるのか、手助けの為にはそうした事が理解できなければなりません。
私たちは日々利用者の皆さんと接することを通じて、利用者の皆さんの信頼を得、その方を理解していきたいと考えています。
私たちが認知症ケアに取り組み始めた当時のケアの心得をまとめたものが「ボケても普通に暮らせる」です。
お読みいただければ認知症ケアをより身近に感じていただけると思います。
「回想法」の取組
上でBPSDは適切なケアによって改善できることがわかっています、と書きましたが、そのやり方の一つに「回想法」があります。
回想法とは簡単に言えば昔の思い出を共有する事です。認知症の症状に物を憶えられない事(記憶障害)がありますが、最近の事は憶えられなくても昔の記憶はある方が多いのです。そこで、昔の記憶がよみがえるきっかけ(昔のおもちゃのような小物や、昔の写真、絵など)を用意し、懐かしい出来事や思い出を語ります。昔のことを思い出そうとすること、さらに人の話を聞く、人に話そうとすることが脳のリハビリにつながります。さらに思い出そうとする事そのものが、心の平穏につながるのです。
サンスクエアでは、落ち着かない人や、BPSDの症状のある人、施設利用を始めたばかりの人など、心穏やかになってほしい方を中心に回想法を行っています。
写真は同じ地域の出身者があつまり、回想法を行っている様子です。
「昔あそこには何があった」といった話題から盛り上がり、最後には1枚の大きな地図が出来上がりました。
根拠に基づいたケアを目指して
私たちはより良い、より確かな認知症ケアを目指して、様々な取組を行っています。日々の業務で見つかる様々な課題を、どうすれば解決できるかを調べ、検討し、試みています。その成果は学会などで発表しています。以下にその1例を示します。
学会発表の例
平成29年5月26,27日 第18回日本認知症ケア学会(沖縄県)
「認知症高齢者の大腿骨頸部骨折術後ケアを振り返って~グループホームケアの果たすべき役割~」
発表者 平川伸吾、上田大輔、安原耕一郎
認知症高齢者の大腿骨頚部骨折術後のケアは、受傷者の高齢化、医療・福祉の連携、リハビリの効果など多くの課題を抱えているが、その実態は明確になっていない。今回当施設での大腿骨頚部骨折について平成12年4月~平成17年6月まで(Ⅰ期)と平成22年1月~平成27年3月まで(Ⅱ期)を比較検討し、グループホーム(GH)ケアの役割と課題に若干の知見を得たので報告する